みんなのスカッと体験談!!

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#0044 池袋の「ぶつかりおばさん」 沈む

ハンドルネーム:りさりさ

休日の昼、私は池袋のサンシャイン通りを歩いていた。中学三年生の私にとって、池袋はちょっとした都会のお出かけスポットだ。今日は友達と買い物に来たけど、途中で別行動になり、私は一人で歩いていた。

そんな時、視界の端に妙な動きをする人が目に入った。

「ぶつかりおばさん」

池袋界隈で噂になっている中年女性らしい。細身の若い女性を狙ってぶつかってくるという、謎の存在だ。私が見たのもまさにその光景だった。

小汚い格好をした50代くらいの女が、謎のビニール袋を片手に持ち、もう片方の手をダラリと垂らしている。髪はぼさぼさで、ところどころ白髪が混じっていた。何より気になったのは、その異様な臭いだ。生ゴミみたいな、汗の染み込んだ服みたいな、何とも言えない悪臭が漂っていた。

おばさんは、口の中で何かをブツブツとつぶやきながら、わざと若い女性にぶつかっている。そしてぶつかるたびに、なぜか舌打ちをするのだ。

「チッ……」

いや、待って。どう見てもおばさんのほうが突っ込んでるのに、なぜ舌打ち?

私は呆れながら、おばさんの動きを観察した。

案の定、またやった。今度は細身のOL風の女性にぶつかり、女性が驚いて謝ると、おばさんは舌打ちしながら「ったく、邪魔なのよ」と文句を言いながら通り過ぎた。

ひどい。

私は「うわぁ……」と思いつつ、その場を離れようとした。

その時だった。

 

ぶつかりおばさん、ターゲットを間違える

おばさんの視線の先に、一人の外国人女性がいた。
20代前半くらいだろうか。金髪のスラっとした女性で、白いワンピースがよく似合っていた。観光客だろうか。少しキョロキョロしながら歩いている。

私は「まさか……」と思った。

だが、予想通り。

ぶつかりおばさんは、一直線に彼女へと向かっていった。

ズンッ!!!

ぶつかりおばさんの肩が、細い外国人女性に思い切りぶつかる。彼女はよろめき、一歩後ろへ下がった。

「Oh……!」

驚いたように声を上げる彼女。しかし、ここで謝るのが普通の日本人観光客とは違った。

彼女はじっと、おばさんを睨んだのだ。

その時、私はあることに気がついた。

この女性、ずっとスマホを片手に持っていたのだが、手を繋いでいた相手がいた。

すぐ隣にいたのは、ガッチリとした体格の外国人男性だった。

彼氏だろう。身長は190cmくらいありそうな大男。Tシャツからのぞく腕は筋肉質で、まるでアクション映画に出てくるボディガードみたいだった。

彼は、ぶつかりおばさんをじっと見つめていた。

すると、ぶつかりおばさんがまたやった。

「チッ……!」

なんと、外国人女性に向かって舌打ちしたのだ。

その瞬間だった。

バッッッ!!!

鋭い音が響いた。

外国人男性が、一瞬でおばさんの顔を殴ったのだ。

私は思わず息を飲んだ。

おばさんの体が宙に浮いたように見えた。数秒の間があり、そのまま地面に崩れ落ちた。

ドサッ……

ぶつかりおばさんは、仰向けに倒れたまま動かない。

通行人も、みんな驚いて足を止めた。しかし、誰も騒がない。むしろ、「ああ、やっとか……」というような空気が流れていた。

外国人男性は静かに拳を下ろし、彼女の肩を抱き寄せた。

彼女は「I'm fine」と笑顔を見せ、彼に軽くキスをした。

周囲の人々は、少し驚いた様子ではあったが、誰も警察を呼ぼうとはしなかった。

なぜなら——

「ぶつかりおばさんが迷惑な存在だと、みんな薄々気づいていた」からだ。

私は、倒れたまま動かないおばさんを見下ろし、心の中で小さくガッツポーズをした。

 

その後の話

その場を離れる時、私は一度だけ振り返った。

ぶつかりおばさんはまだ地面に倒れたままだった。誰も手を貸さない。

……まあ、当然だ。

あんな迷惑行為を続けていたのだから、こうなっても仕方ない。

私は何も言わず、スマホを取り出し、友達にLINEした。

「ねえ、今めっちゃヤバいもの見たんだけど」

帰りの電車で話すネタができたな、と思いながら、私は足早に池袋の街を後にした。