ハンドルネーム: 四葉のクローバーを探す人
雨上がりの朝、通勤ラッシュ、私はいつものように駅を出たばかりでした。まだ道は濡れており、ちらほらと傘を差す人々が通りを急いでいました。そんな中、一人の男が目につきました。その人は、傘を水平に持って歩いているのです。こんなにも多くの人が行き交う場所で、どうしてそんな危ない持ち方をするのか、心の中で大いに疑問に思いました。
その人は、私より少し若いくらいで、見るからに自己中心的な雰囲気を漂わせていました。彼の周囲では、人々がその傘をかわすために、歩く速度を変えていましたが、彼自身はそのことにまったく無頓着で、自分のペースを崩さずに歩いていました。
私は少し距離を置きながらその男を見ていましたが、突然、予想していた通りの事故が起こりました。別の男性が、その傘の先端に膝をぶつけてしまったのです。
その後も私は、やむを得ずその自己中心的な男を観察し続けました。歩く方向が同じなのです。彼は相変わらず、傘を水平に持ちながら通路を歩いていて、周りの人たちが彼を避ける様子が何とも言えず不快でした。一体全体、こんなにも周囲が不便を被っているのに、どうして彼は自分の行動を改めようとしないのでしょうか。
その疑問は私だけではなく、他の通勤者の間でも共有されているようで、彼の周囲ではため息がちに傘を避ける動きが続いていました。私は、これ以上この状況を見過ごすわけにはいかないと感じていましたが、直接彼に注意をする勇気もありませんでした。そんな私の心情を察してか、運命のような出来事が起こりました。
ある日、再びその男が水平に傘を持って歩いているのを目撃しました。しかし、この日は違っていました。彼の後ろを歩く女性が突然彼の肩を掴み、彼に対して厳しい言葉を投げかけたのです。「傘をちゃんと持って!他の人が危ないでしょ!」という女性の一喝に、その場にいた多くの人が彼女に同意するかのように、彼に冷たい視線を送りました。その男は、突然のことに言葉を失い、しばらく呆然としていましたが、やがて傘を立てて持つように変えたのです。
その瞬間、私はある種の救済を感じました。誰かが彼に対して直接的に意見を言ったことで、彼の行動に変化が見られたのです。それ以来、彼は傘を水平に持つことをやめ、少しは周囲の安全を考えるようになったようでした。
その後の数週間、私はその男性を時々見かけることがありましたが、彼はもう以前のように傘を水平に持つことはありませんでした。通勤の際に彼を見かけるたびに、彼がどのように変わったのかを確認するのが私の小さな楽しみの一つになっていました。
(掲載に当たっては、本人の許可を得ております。)